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help リーダーに追加 RSS 『クジラの島の少女』

<<   作成日時 : 2005/12/04 21:52   >>

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東京の冬は寒い。
暖房をガンガンにかけてセーターを何枚着込んでも寒い。
心がサムい、からなのか。などと考えながら、ニュージーランドの大自然と
そこに暮らす少女を描いた『クジラの島の少女』をDVDで観ることにしました。

[ストーリー]
ニュージーランドの小さな浜辺の村。
その村には今を遡ること1千年前、遠くハワイキから新しい地を求め出発した
勇者パイケアが、苦しい航海の途中、クジラに助けられて導かれて、
辿り着いたという伝説が語り継がれてきた。
族長の長男ポロランギは男女の双子を授かるが、
不幸にも男の子と母親は出産時に命を落とし、女の子が1人残された。
後継者の誕生を心待ちにしていた祖父のコロは、生存したのが女の子であったという
落胆から、パイケアの存在を受け入れることができない。
新たな後継者を見つけるべく村中の12歳となる少年たちをマラエ(集会所)に集め、
部族の伝説や、伝承歌、闘いの技術などの訓練を開始する。
そんな中、聖なるものとして崇める鯨が大量に浜に打ち上げられる。

[観おわって]
この映画をスクリーンで観れなかったのが本当に残念です。
そのままの空と雲、大いなる海の姿、自然の中にある人々の暮らし。
それら全てがとにかく美しい、と感じました。

監督はニキ・カーロというマオリ人女性。
出演者もすべてニュージーランドのマオリ人です。
この映画は、マオリの誇りや人々の生き方、過去と未来を真正面から描いた作品です。
ストーリーはとてもシンプルですが、
そこに映し出される一つ一つが彼らのメッセージなのです。

マオリ人は、今から約1000年前、
ポリネシアの祖先の国であるハワイキ(マオリ語で故郷)からやってきて、
ニュージーランド先住民となりました。
その後数100年にわたり多くのワカ・ホウルア(航海用のカヌー)が、
ニュージーランドの各地に到着します。
マオリの人々はクジラをカイティアキ(守り神)として崇め、
鯨肉を食用に、そして硬質な骨を武器に利用していました。
映画の中でも、族長であるコロの鯨の骨の首飾りが神聖なものとして登場します。
ヨーロッパ人が移住し始めたのは、英人キャプテン・ジェームス・クックが
1769年にニュージーランドをはじめとする南太平洋への大航海を終えた後でした。
1840年のワイタンギ条約の調印によって英国の植民地となった
ニュージーランドの人口は、移民の流入により急増していくことになります。

ワイタンギ条約は今もニュージーランドの法や社会の中心に残っています。
その解釈について多くの問題が残されましたが、
多くの人がワイタンギ条約を最初の条約として考えています。
<ワイタンギ条約概要 〜英語版解釈〜>
・条約により、移住者はニュ−ジ−ランドに留まる権利が与えられた。
・条約により、マオリの人々は望むかぎり彼らの土地や森・漁場を
 所有し続けられることが保証された。
・条約には、マオリの人々は彼らの領土や生活風習について独自の決定ができるとある。
・条約は、全ての平和と秩序のために政府を樹立することを保証した。
・条約はまた、マオリの人々にとって、価値ある全てのものを保護することも保証した。

ワイタンギ条約での「土地所有」概念そのものをよく理解していなかった
マオリ人たちはその意味に気づき始め過激な抵抗を始めました。
主要な土地を奪われ、貧困、悪健康に陥ったマオリ人の人口は激減し、
1890年までにはたった40,000人程度まで落ち込みました。
1996年現在でマオリ人の人口は50万人以上、
これはニュージーランドの全人口のおよそ15% に相当します。
ただし、この統計にはヨーロッパ系ニュージーランド人との2世・3世を含んでおり、
純粋なマオリ人となると非常に少ないと言われています。
職を求めて都市部へ移住することにより、マオリの伝統や文化、
マオリ社会の枠組みなどが大きく変わりつつあるのも現実です。

マオリの社会では、個人の意思より部族の団結、共生が重要とされています。
また自分の先祖の意志が現在の家族に脈々と息づいていることを忘れません。
祖父コロが頑なに守ろうとしているものは、理屈では説明できないものなのです。
私たちには想像のつかない思いをそこに見る事ができます。
ラストシーンで主人公パイケアがワカ・ホウルアに乗って海に出るシーンは
鳥肌が立つ程美しく、彼らの明るい未来を想像させます。
人の痛みがわかる純真な心、人間としてのナチュラルな生き方。
寒く渇いた心を一とき潤してくれる素敵な映画でした。(★★★☆☆)

『クジラの島の少女』
2002年ニュージーランド映画
監督・脚本 ニキ・カーロ
出演 ケイシャ・キャッスル=ヒューズ/ラウィリ・パラテーン

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2006/01/13 22:18

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
わが映画評にコメント戴きまして有難うございました。
私もこの作品にはかなり好感が持てました(新しい作品では滅多に出さない☆☆☆☆即ち8点を進呈)が、Akoさんは実に詳しく作品の背景をお調べになっていますね。感心致しました。
オカピー
2005/12/05 16:56
どうもぎこちない演出で、主役の娘の演技も地まるだしの感じでしたけど、
鯨が海岸に打ち上げられてからの数分間は圧倒された記憶があります。
ラストはそれこそメルヘンでしたけど(笑)
いい映画だったと思います。
kiku
2005/12/15 21:51
kikuさんへ
コメントありがとうございます。
確かに、この映画に出てくる人たちはキャラも薄いし、メルヘンチックなシーンも古臭い感じもします。でも、そんな素朴な映画があってもいいと思います。
マオリの文化について調べてみようと思わせるくらい、私には、真直ぐな監督の気持ちが伝わってきました。
Ako
2005/12/16 01:02

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