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help リーダーに追加 RSS 『ユメ十夜』

<<   作成日時 : 2007/02/07 02:37   >>

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夏目漱石による『夢十夜』が書かれてからおよそ100年。
第一線で活躍する十人の映像作家により再構築された現代版『ユメ十夜』。
一風変わったオムニバス映画を観に行ってきました。

映画を観るにあたって漱石の『夢十夜』を読んでみました。
第一夜から第十夜まで、
突拍子もない設定の理解に苦労するも、
しだいに、めくるめく摩訶不思議な世界に引き込まれました。

楽しい夢、悲しい夢、
遠い昔の記憶をたどる夢、行ったことのない景色を見る夢、
色のある夢、色のない夢、
終わる夢、終わらない夢、
夢には色々な種類があり、完結しない夢を見て目を覚ますと、
ほんの数秒間、夢なのか現実なのかわからない、不思議な時間が流れます。

漱石が見た十の夢もしかり。
まったく辻褄が合わず、支離滅裂で、奇想天外。
幻想的で、おどろおどろしく、滑稽で哀しい。
今から約100年昔に、
歴史に名を残した文豪は、一体どんな夢を見たのだろう。
夢が、人の深層心理を表すのなら、
こんな夢を見る人間なんて、よっぽど気がふれているとしか思えません。
しかし、そうは言っても、
もしかしたら、夢の中で私は、
とんでもなく意義深い経験をしているのかもしれないし、
別の人間を生きているのかもしれない。
もしかしたら、夢の中で私は、
とんでもなく大勢の人と出会っているのかもしれない。
もしそうなら、夢の中で経験したことは、
現実の自分に、知恵や悟りをもたらしてくれているのだろうか。

本作でメガホンを取ったのは、
下にも書いたように、日本映画の巨匠から今話題の新鋭まで様々で、
同じ人の話が元になっているなんて、とても思えないほど、
時代背景も違えば、登場人物も違い、クロスする繋がりもなく、
あるものは純文学、あるものはミステリー、
あるものはホラー、あるものはコメディと、
各々が、てんでばらばら思い思いの解釈で一作が描かれていました。

ショートフィルムは、今では一つのジャンルとして成立していて、
短い時間という制約のなか、
伝えたい思いを伝え、インパクトを残す作品とするには、
無駄のないメリハリのある脚本、
計算された美しい映像と、小気味良いテンポが必須で、
長編で高く評価されている監督でも、
短編では、その才能を活かしきれず、面白い作品が撮れない事も十分あり得る事で。
単なるお遊びと見くびるなかれ、
監督陣の苦労の跡が垣間見れました。

第二夜を撮った市川崑監督は、言わずと知れた日本映画界の重鎮。
かの巨匠が、この企画に参加した勇気には脱帽です。
短い時間をリアルタイムで、スタイリッシュに描き、
シンプルな構成で、登場人物も最小におさえることで、
登場人物の息づかいや、刻一刻の時の流れが鮮やかに表現されていました。
『ユメ十夜』は、時の流れが一つのキーワードとなっており、
交錯する時間軸をトリッキーに行き来する場面が多く見られました。

西川美和監督の第九夜。
前作『ゆれる』では、女の目線ならではの辛辣さで、
男の心情をエグルように表現したのが、記憶に新しいところ。
今作でも、夫を思う女の情念が、群青色のおどろおどろしいトーンで彩られ、
いつものように皮肉たっぷりで、面白い一作でした。

さらに、
松尾スズキ監督の第八夜、山口雄大監督の第十夜、
この二作は圧巻でした。
時間いっぱい、息もつかせぬリズム感で捲くし立て、
かと言って、原作からかけ離れてしまうことなく、
その匂いやユーモアの源流を汲みつつ、
絶妙なバランスでチューニングし、
笑いあり、お腹いっぱい、満足度の高い作品に仕上がっていました。

たかが夢、されど夢。
100年の時を経て、ふたたび蘇った、
凡人には想像も及ばない、漱石のファンタジー。
これ、見ない手はないですよ。(★★★★☆)


『ユメ十夜』
2006年日本映画
・第一夜 監督:実相寺昭雄     出演:小泉今日子/松尾スズキ
・第二夜 監督:市川崑       出演:うじきつよし/中村梅之助
・第三夜 監督・脚本:清水崇    出演:堀部圭亮/香椎由宇
・第四夜 監督:清水厚       出演:山本耕史/菅野莉央
・第五夜 監督・脚本:豊島圭介   出演:市川実日子/大倉孝二
・第六夜 監督・脚本:松尾スズキ  出演:阿部サダヲ/TOZAWA/石原良純
・第七夜 監督:天野喜孝/河原真明  出演(声):Sascha/秀島史香
・第八夜 監督・脚本:山下敦弘   出演:藤岡弘、/山本浩司
・第九夜 監督・脚本:西川美和   出演:緒川たまき/ピエール瀧
・第十夜 監督・脚本:山口雄大   出演:松山ケンイチ/本上まなみ/石坂浩二

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コメント(5件)

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第一夜にはかなり思い入れがあるのですが、どうでした?
小泉・実相寺というイメージではないのですが。いや、案外実相寺でよかったのかな。
映画館で観れそうにないのですが、めっちゃ気になります。
kiku
2007/02/08 23:43
kikuさんこんばんは。
原作の第一夜は、とりわけ幻想的で棘のあるお話でしたね。映画の第一夜も、同じように雰囲気のある美しい作品でした。女役のキョンキョンの、独特な声もハマってました。kikuさんにも是非観てほしいな〜。
Ako
2007/02/10 01:32
こんばんは。
下記の記事にしたんですが、これ、どういうわけか、別の監督10人で『夢十夜 海賊版』というのがあって吉祥寺バウスシアターで公開されるようなんです。

http://blue.ap.teacup.com/documentary/1059.html

両方、見比べてみるのもいいのかも・・。頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだけど(笑)。
しかし、漱石はやはり偉大ですね。
kusukusu
2007/02/10 18:43
>kusukusuさん
漱石の『夢十夜』は、映像が浮かびやすい作品なので、海賊版と言わず、誰でも映画化に挑戦したらいいと思いますよ。
ただ、二番煎じはいかがなものかと。。。
Ako
2007/02/11 21:41
あ、厳しいですね・・
たしかに二番煎じっていうか、便乗企画っていう気はするけど、みんな、なんとかしてデビューしたい、名を売りたいって必死なんですよ、きっと・・
まあ、ミニシアター系映画というマイナーな世界の、そのまたマイナーな話ですので、大目に見てやってください。(しかし、これ、両方を見る観客が実際にどれぐらいいるんでしょうかね・・)
kusukusu
2007/02/11 22:50

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