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「こういう事もあるわよ」 「めったにハズすことなんてないのに…」 映画を観ようと、開場を待っている私の耳に、 映画を観終えて、劇場から出てきたオバ様たちの、 明らかに、つまらなかったと言わんばかりの会話が聞こえてきました。 シネスイッチ銀座は、土地柄もあり、 ミニシアターの中でも、 わりあい上品で、小ぶりながら味わい深い作品を上映する映画館なのですが、 良心のかたまりのような、心温まる感動作もあれば、 一見大人の甘いラブストーリーに見せかけて、 実はかなりクセがある、本作のような作品も上映されます。 私にとっては、それはそれで、嬉しいサプライズなのです。 期待を裏切られることを期待して、観てみることにしました。 今日の映画は『カンバセーションズ』。 舞台はニューヨーク、披露宴会場の片隅。 不機嫌そうに煙草に火をつける女、近づいてくる男。 「シャンパンは?」 「お酒は飲まないの」 「煙草は吸うのに?」 2人は初対面なのか、それとも…? 縦2つに分割された左右の画面には、 同じ時間を過ごす2人の表情や仕草が、 こちらからとあちらから、それぞれに映し出され、 そうかと思うと、時おり、若かリし日の2人の姿が、 今の2人にオーバーラップするように差し込まれる。 2人はかつての恋人同士だった。 その日の新婦は男の妹。 男と再会することがわかっていて、ロンドンからやって来た女。 会うことを予想していた? 昔のようにセックスしてしまうことも? 女には医者の夫と3人の子供が、そして男にも恋人が。 「グラスを見て思ったの。ファックするって」 「そして、あなたに引きずられてしまうって」 恋愛ドラマと言えば、 まず2人の男女が出会い、 好きになったり嫌いになったり、障害があったりなかったり、紆余曲折あって、 互いの気持ちを確認し、愛し合い、そして何らか理由から別れの時を迎える、 というのが定番。 とりわけドラマ性のある出来事を優先して展開していくのが、 ふつうのラブストーリー。 しかし、この映画で優先されているのは、 男と女の生々しい空気感と、2人の口からついて出る言葉の一つ一つ。 エレベーターを降りて、女の部屋にたどり着くまでの時間とか、 部屋に入ってからキスをするまでの時間とか。 そうそう、こんな感じ! やるの?やらないの?どっち?! スクリーンに変な緊張感が走ります。 初めての相手じゃないから、互いの流儀は心得ていて、 服の脱がせ方や服の脱ぎ方も、なんだか懐かしく、 かつての恋人との甘美な時間を目の前に、 1度セックスしたからといって何も変わらないと、自分に言いわけをしつつ、 1度セックスしたことで何かが変わってしまうかもしれないと、 不安と僅かな好奇心が交錯するのも束の間、 それでも、とりあえず、やっちゃうのが男と女でもあって。 たかがセックス、されどセックス。 主演の女を演じたヘレナ・ボナム=カーターは、 イギリスを代表する演技派女優ですが、 表情や顔の造りそのものに、何となく洗練されていないところがあって、 その雰囲気が、この映画のイイ意味での下世話さを助長させていました。 ほとんどが男と女2人のシーンで構成されている本作では、 彼女の存在感が必要不可欠で、映画に説得力を持たせたのだと思います。 そして、この臨場感こそが、この映画のすべてなのです。 たしかに、日常の中で起こったある時間を切り取っただけのこと。 『危険な情事』でも『愛の流刑地』でも、ましてや『高校教師』でもありません。 目の前にある甘美な時に身を任せても、 刻一刻と終わりの時が近づくだけで、 終わった後に残るのは、 元恋人と何年かぶりに再会しセックスしたという事実だけ。 胸焼けするほどのドキドキも、スリルや罪悪感もなければ、 儚い夢のように、甘酸っぱいわけでもなく、 頭はいたって冴えていて、そこには現実感に満ちているのです。 こんな映画があってもいい。 人生のなかで誰にでも起こりうる、小さなアクシデントが、映画になるなんて、 人生捨てたものではないではないか。(★★★★☆) 『カンバセーションズ』 2005年アメリカ映画 監督:ハンス・カノーザ 出演:ヘレナ・ボナム=カーター/アーロン・エッカート |
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まだ観てませんが、2分割画面を部分的に使用する例はあっても、本編のかなりの部分を通してるのって珍しいですね。 |
めとろぽり太 2007/03/09 08:23 |
とりあえあずやっちゃうのが男と女で... |
kiku 2007/03/10 01:19 |
>めとぽりさん |
Ako 2007/03/11 00:20 |
>kikuさん |
Ako 2007/03/11 00:39 |
見ました。いやー、これはつまらないどころか、隅々まで実に面白い。 |
kusukusu 2007/03/29 15:08 |
そのために感情移入はしにくいところはあるかもしれませんが(どちらか一方の視点に感情移入して見ていくことが容易でないので)、でも見た後に切なさを感じたのは、とにかく2人は会っている間は同じ場所で同じ時間を過ごしていたはずなのに、こんな風に違いがあって、やっぱりずれていってしまうんだなあ・・という感慨があるからだと思ったんです。どちらか、一方の視点に絞って描いたものではないからこそ、そういうずれそのものに触れて切ない気持ちになったというのか。だから二分割画面はこの作品の内容に合致していると思ったんです。僕はあざとい手法だとは思いませんでした。というか、ほんと、こんな描き方があったのかと感嘆しました。 |
kusukusu 2007/03/29 15:10 |
余談ですが、この映画の挿入歌を歌っているカーラ・ブルーニはイタリア生まれでフランスで歌手として活躍してきた人です。というか、フランスの女優、ヴァレリー・ブルーニ=テデスキ(『ラクダと針の穴』という素晴らしい監督作品もある)の妹なんですよ。こんなところにもフランス色がうかがえますね。 |
kusukusu 2007/03/29 20:04 |
>kusukusuさん |
Ako 2007/03/30 01:24 |
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