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help リーダーに追加 RSS 『パラダイス・ナウ』

<<   作成日時 : 2007/04/27 03:46   >>

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ふだん、欧米の映画を観ることが多いのですが、
アジアや中東、アフリカなどマイナーな国の映画を、
日本で観ることができるのは、貴重な経験です。
この映画は、
2005年度のアカデミー賞はじめ欧米の映画祭で注目された話題作。
同じ時代のなかで、違う国の同世代が、
何を思い生きているのかを知る事が出来る映画です。
今日の映画は『パラダイス・ナウ』。

イスラエルによって、長年、侵略支配され続けているパレスチナ人の現状を、
その内側から描いた映画です。
イスラエル軍に対して、
自爆攻撃を遂行する2人の若者の姿が描かれています。
ドキュメンタリーではないので、
映画的な解釈やドラマ的な演出が多く見られますが、
あまりにも極限的な状況に違和感を感じると同時に、
同世代の人間として、
彼らが選ばざるを得なかった選択に、
共感する部分もありました。

世界的に見れば、
日本は、高度な経済力と文化を持ち、
言論の自由も認められた、ある意味では成熟した平和国家で、
新聞やテレビの報道には、
行き過ぎたナショナリズムもなければ、
宗教観が語ることはタブー視され、
偏った思想は出来る限り排除し、
ひたすらに、中立であろうとする姿勢が見られます。
一方で、
靖国や日米安保の問題では、
隣国に対して、
一貫した態度を示すことが出来ないのも事実です。
9.11でアメリカが負った傷を見て、
「ヒドイことするよな、、、」とは思っても、
どこかで、日本じゃなくて良かったというムードはあったし、
アメリカに追随する風潮に、
ぼんやりとした危惧を感じたのも事実だと思います。
世界平和維持や地球温暖化に乗り切れないのも、
日本独特の日和見主義が原因していて、
それは、自分自身の心の中を顧みてもハッキリしています。
もし、彼らの戦いが聖戦だとしたら、
その戦いの意味を理解するのは難しいと思います。

しかし、
ハニ・アブ・アサド監督がインタビューで語っていたのは、
自爆攻撃を遂行する者たちが、
必ずしも同じ志を持っているわけではないということです。

主人公の若者は、
四方を、武装したイスラエル軍の兵士に囲まれ、
フェンスと呼ばれる有刺鉄線で囲まれた中で生きていて、
その状況を、まるで牢獄の中にいるようだと言い、
自由を手に入れる唯一の方法は、
自爆攻撃を実行することだと信じています。
もう一つ、
この映画で語られる真実は、
主人公の一人が背負う宿命です。
それは、
イスラエルへの密告者であった父親に対する、自分なりの決別でもあり、
一人の人間の運命は、
綿々と連なる血縁の歴史と深く関わっていて、
その根の深さを思い知るのです。

昔、家族でドラマを見ていた時、
母がぼそっと、
「あんたたちが殺されたら、私は犯人を殺すわ」
と言ったことがあります。
あんたたちというのは、私と弟のことで、
そのドラマは、
嫉妬にかられ、復讐する女を描いたありきたりなサスペンスだったのですが、
母が言い放ったそのエキセントリックな言葉には、
その場の団欒を凍りつかせるほどの迫力とリアルさがあり、
今もその時のことを覚えています。

武器を持つ理由は、
一つではないのかもしれないということ。
家族を守るため、
あるいは、反対に、血の繋がりを断ち切るため。
過激なナショナリズムと片付けて、
理解したつもりになっていることの裏側には、
普遍的な家族の、
個別な問題が関わっていることに気づかされます。

人間の持つ英知の限りを知り、
せめて、遠い異国の地で、
自ら命を落としていった人たちの思いに触れてみたいと思うのです。
ラストシーンは印象的で、
静かなエンドロールが流れ終わっても、
しばらく、席を立つことが出来ませんでした。
知ることが、問題解決への道だとするなら、
一人でも多くの人がこの映画を観て、
一つの事実を知ること自体に、
この映画の大きな意味があるように思います。
(★★★★☆)


『パラダイス・ナウ』
2005年フランス・ドイツ・オランダ・パレスチナ映画
監督・脚本 ハニ・アブ・アサド
出演 カイス・ナシフ/アリ・スリマン

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