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ゴールデンウィーク中に、 話題の『バベル』を観てきました。 母と映画に行くのは、覚えているかぎり今回が初めてで、 帰りの車のなか、 この映画の、あるいは世界の不条理について話し、 私は母のことを、少し知ることが出来た気がしました。 モロッコの山岳地帯。 文明から取り残されたかのような遊牧民たちの生活。 そして、無知から起こった悲惨な事故。 アメリカの中流家庭。 洒落たマンションに白人の子供、メキシコ人の家政婦。 まるでわが子を見るような温かい眼差し。 そして、故郷のメキシコへ。 メキシコの結婚式。 ラテンのリズム、親族そして民族の血のつながりを確かめ合うように、 夜更けまで踊りつづける。 立ちはだかる国境の壁、露になる人種差別。 灼熱の砂漠で罪の無い子供達が犠牲になる。 そして話は日本へ。 物が溢れ、価値観が多様化する分だけ、 相容れない感情が、いたる所ですれ違う。 聾唖の少女。 持てあます自分の存在。 愛されたいのに愛されない、行き場のない孤独。 メキシコを含め4つの国の「今」が同時進行で映し出され、 あまりにも違うそれぞれの国の空気感に、 初めのうち、戸惑いをおぼえます。 しかし、映画が進んでいくにつれ、 その違和感は、暗闇に目が慣れるかのように、 一つの大きな流れの中に、見事に溶け込んでいきます。 その大きな時間の流れは、 どの場所の、どの登場人物の感情をも呑み込んで、 淡々と進んでいきます。 子供や弱い立場の者たちが痛みを負い、 言葉を持つ者でさえ、 その使い方がわからず途方に暮れている。 悲しみや怖れ、孤独、 不確かで不安定な思いだけが浮彫りになる。 人々の営みは一点の翳りもなく必然で、 何かが少しずつ欠如している。 あともう少し、 それが何なのかは、誰にもわからない。 映画の視線は、穏やかで優しく、 まるで、下界を見下ろす神の視線のように、 冷静さを保っている。 その景色は、悲しみで埋め尽され、 悲しみが世界の全てのようにさえ思えます。 しかし、 映画を観ている私は神様ではないので、 その景色の中に、人間の美しさを必死で探します。 善良なメキシコ人の家政婦にも、 モロッコの幼い兄弟にも、 傷を負ったアメリカ人の夫婦にも、 喪失感を抱えた日本の父娘にも、 等しく悲しみの試練が与えられる。 そして、 その不条理な運命の中で、 一縷の望みを求め、懸命に生きている。 悪い人間は一人も出てこない。 その健気な人間の姿が、 この映画の唯一の救いとなっていることに気づくのです。 複雑に交錯する時間と場所が、 一分の狂いもなく、緻密に織り込まれ、 観る者をぐいぐいと引き込みます。 映画が進むにつれ、 監督の伝えたいメッセージが、 少しずつクリアになっていくことに快感を覚えます。 さらには、 アメリカ人の妻(ケイト・ブランシェット)しかり、 メキシコ人の家政婦(アドリアナ・バラッザ)しかり、 登場人物一人一人に、 たしかなの存在感があり、 愚かさや健気さを感じさせるに十分な演技を見せてくれます。 話題の菊地凛子の演技は、 聾唖の少女チエコの苛立ちや絶望感に肉迫していて、 想像していた以上に、素晴らしいものでした。 外国映画の中の日本人と言えば、 今だに、感情の起伏がなく平淡で、 退屈な存在として描かれることが多いのですが、 チエコというキャラクターは、 日本でもめったに描かれることのない、 聾唖者の孤独に焦点をあてた新鮮さも相まって、 他の登場人物を圧倒するほどエモーショナルで、 人間味溢れる、愛すべきものだったように思います。 監督は、メキシコ人のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。 前作で製作を担当した『美しい人』でも、 いくつかのエピソードをオムニバス形式で繋いでいく手法を用いています。 『美しい人』は私の好きな映画で、 人間の弱さと、それに立ち向かう女性たちの姿が、 ためらう事なく描かれていました。 題材の重厚感と、 辛辣なまでに、登場人物の内に深く切り込む潔さ、 いずれも、前作を凌ぐ完成度の高さでした。(★★★★☆) 夜9時半からのレイトショーで観るには、 少々ヘビーな映画だったかもしれません。 「これがリアルだとしたら、相当キツい映画だよね」と言う私。 「そうかしら?」と母。 「だって、悪者が出てこなかったら、誰も報われないじゃん」私。 「みんなが善い人だとは思わなかったけど?」母。 そうくるか。。。 「ガエル・ガルシア・ベルナルって、超タイプなんだよね」という私、 「あんた、趣味悪いわね」と母に一蹴され、 初めての母との映画が終わりました。 『バベル』 2006年メキシコ映画 監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 出演 ブラッド・ピット/ケイト・ブランシェット/ガエル・ガルシア・ベルナル/ 役所広司/アドリアナ・バラッザ /菊地凛子 |
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役所広司も出てるし、興味あるなー。 |
Amy 2007/05/17 23:14 |
新婚さん、いらっしゃ〜い! |
Ako 2007/05/18 17:09 |
Akoさん、こんばんは。 |
栗本 東樹 2007/05/18 20:51 |
映画を観ること=作り手とのコミュニケーションだから、この人嫌だなと思うこともあれば、この人とは無性に合うと思う時もありますよね。ただ私は、出来ることなら、一人でも一作品でも多く分かり合えた喜びを感じたいとは思っています。ブログの中の栗本さんの言葉は何ものにも支配されていなくて、映画とちゃんと向き合っている感じがして、すごく好きです。 |
Ako 2007/05/20 23:42 |
同じガエル君が主演の、だけどまるっきり役柄が違う、『恋愛睡眠のすすめ』も良かったら見てみてください。男版『アメリ』という感じの『恋愛睡眠のすすめ』にAkoさんがどういう感想を持つのかな−と気になる(笑)。 |
kusukusu 2007/05/23 00:31 |
私もGWにバベル見に行きました。 |
Babel 2007/05/23 00:47 |
>kusukusuさん |
Ako 2007/05/23 23:29 |
>babelさん |
Ako 2007/05/23 23:39 |
あー、『美しい人』、好きで嬉しい気がする(笑) |
kiku 2007/06/15 00:36 |
kikuさんの記事、興味深く読ませていただきました。kikuさんのブログは、考察が深く、こういう見方もあるのかと、いつも発見させられます。うまくコメントが出来なかったので、こちらに書きます。 |
Ako 2007/06/16 02:52 |
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