COLDFEVER

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 『めがね』

<<   作成日時 : 2007/10/27 01:14   >>

トラックバック 0 / コメント 2

画像

兵庫の実家から東京に出てきたのは、今から6年前です。
実家暮しが窮屈でしかたなくなり、
どうせ一人暮らしをするなら、
知った人のいない東京で、と思い立ち、
そそくさと地元を離れ、一人東京にやってきました。

都会といっても東京は大阪などと何らかわるところもなく、
ただ違うのは、何をしても一人だということ。
夜な夜な飲んだくれようが、
洗濯物を何週間ためようが、
ネットオークションで月に何万もの買い物をしようが、
誰一人私を咎める人はなく、
恐ろしいほど自由で、
お金さえあれば、どんなことでも出来てしまう。

しかし、当たり前のことだけど、
どんなに自由でも、
人はなかなか自分を幸せだとは思えない。
それが大問題なわけです。

大学生の頃、冬になると、
長野にあるペンションに入り浸っていたことがあります。
運動は、何一つろくに出来ないのですが、
私が、唯一ハマったと言えるスポーツがスキーでした。
朝6時に起き、スキー客の朝食の準備をし、
午前中の部屋そうじを済ますと、
ゲレンデへ滑りに行き、
夕方近くなると、
夕食の準備に帰ってくるという生活をしていました。
今では考えられない過酷な生活ですが、
こんな私にも、若くて元気な時があったということです。

無心でスキーをすることの楽しさが一つ。
朝から晩まで体を動かし、夜9時には自然と眠たくなるという、
規則正しい生活が心地よかったのが一つ。
非日常である山村という環境で、
煩わしい日常から解放される喜びが一つ。
今と比べれば、
取るに足らないものではあるものの、
当時、それなりに感じていたであろう都会のストレスを、
そこに行くと、忘れられることが、
何より良かったのだと思います。

ただ、そこでの暮らしが、
全てにおいて、完璧だったわけではありません。
コンビニもなく、
それゆえに、毎日の食事は大勢でしなければならなくて、
美味しいとは言え、
「なら、もっと食べろもっと食べろ」と、
尋常じゃない量の‘なすの油炒め’を食べさせられ、
下らない世間話に付き合わされ、
朝遅くまで寝ていることも許されず、
村はずれの小さな喫茶店で一服していても、
どこで誰に見られているか気が気でなくて。

しかし、今思えば、
そんな規律にも従順に従い、最後までやり切った清々しさが、
心に残っています。
下手に知恵をつけ、
理屈がないと行動できない今の私からは、
想像も出来ないほどのことが、
当時の私には出来たのだと、
我ながら、誇らしくも思えます。

『めがね』の中で、
主人公のタエコ(小林聡美)は、
一人、南国の離島に旅行者としてやって来ます。
村の人たちの輪に入ろうか入るまいか、
微妙な距離感を保ちつつ、悪戦苦闘するのですが、
この違和感、居心地の悪さというのは、
都会から、単身田舎にやってきた者が必ず味わう感覚です。
田舎ならではの協調の形を、静かに強要される、
あのプレッシャーは、
なかなか慣れるものではありません。

ただ、その時期を過ぎると、
今度は、その協調の形に耐性ができていき、
なんなら、
徐々に順応していく自分に気づき、ビックリします。
人によっては、そこに住み着いてしまう場合も。

画像

一人旅の醍醐味は、
一人ぼっちの孤独感を、胸いっぱいに満喫することにあります。
心も体も一人ぼっちになった時、
自分にとって、本当に大切なものが何なのかを知るのです。
タエコもまた、一人旅をしているはずなのに、
いつしか、人の輪のなかに吸い込まれるように溶け込んでいく。
人はどこまで行っても、
人のなかでしか生きられないように出来ているのでしょうか。

人から望まれる自分の役割とは何なのか、
人から良く思われているのかを気にし、
どう振る舞うのが正しいのか、
旅先でも、普段と同じことように思い悩んでしまう。
ただそこにいるという事が、
自分らしくいるという事が、どれほど難しいことか。

小林聡美、もたいまさこ、
とくればやっぱり、「やっぱり猫が好き」です。
当時としては珍しいスタンドアップコメディで、
ヒネリのきいた展開と絶妙な間合いは、
とうてい台本があったとは思えないほどナチュラルで、
かつ斬新だったのを、今でも覚えています。
あの‘ゆるさ’の系統は、本作にもしっかり受け継がれており、
そんな、ゆるかわ加減にどっぷり浸れる一作です。

どこまでも澄んだ海、
なんとも言えず美しい色合いを見せる夕焼け、
さらさらの白い砂浜の、
温かい砂の中に、今すぐ裸足をつっこみたい。

私にも、あるがままでいられる場所が、この世のどこかにあるのかな。
ゆる〜い大人のおとぎ話です。(★★★☆☆)


『めがね』
2007年日本映画
監督・脚本 荻上直子
出演 小林聡美/市川実日子/加瀬亮/光石研/もたいまさこ

設定テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
おひさしぶりー!「めがね」の宣伝写真によく浜辺で体操しているのに
親近感を持って一度見に行ったけど、あれほど始終海のさざ波の音と
微妙な飾りのない会話と、日本画的な間の映画は初めてやった。
でも見るだけで癒し効果ありって感じで世の中本気で疲れているんだなーと
つい「ミマキング診療所」的に見てしまった。大人の女性な映画だったなあー。
みまきんぐ
URL
2007/10/28 23:36
コメントありがとう。
メルシー体操のことですね。浜辺で老若男女が無心で体操、、、
まさに、みまきんぐの世界じゃないですか!なるほど、みまきんぐ的に言うと、やっぱり世の中疲れた人が多いって事だね。
この映画に共感するところがあるとすれば、私も、ここじゃない何処かを探しているってことかな。いつも漠然とした違和感を感じてるというか。そろそろ私も、診療所に定期検診に行かないと!
Ako
2007/10/29 00:58

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文