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予告編やチラシのポップな印象を、 いい意味で裏切るクセのある作品でした。 一筋縄ではいかない映画です。 マイケルジャクソンの物まねをして生計を立てるマイケル。 マリリンモンロー扮するマリリン、 さらには、チャップリン、ジェームスディーン、 リンカーン大統領やローマ法王まで。 その場所には、大きな城があり、羊や馬を飼い野菜を育て、 世間から隔絶された不思議な場所。 そこでは、それぞれが自分ではない誰かとして存在しています。 喜びも悲しみも、その誰かとして受け止め、 自分ではない別の人間として生きることが許された楽園です。 なんて滑稽な、そう思うかもしれません。 しかし、彼らを見ているうち、 しだいに理解できるからまた不思議。 それは例えば、 インターネットでブログを書くのと似ています。 そこで表現しているのは、 確かに自分自身なのだけれど、その姿は見せない。 常識や規範などにとらわれることなく、 思う人間を演じられるのも事実。 演じている対象が虚像というなら、 そこにあるのは、全て嘘っぱちかもしれません。 でも、そこでしか表現できない事があり、 そこにある自分のほうが、 人から見えている自分より、より素に近いとも思えます。 表現することこそが生きることとも思える場所なのです。 紙一重のところ、 細いピアノ線一本の上を歩いているような不安定感。 いつまでもそこに居られるわけがないことはわかっている。 でも、一度そこを渡り始めたら、 途中で降りることは出来ない。 それはある意味で、死を選ぶこと。 何が幸福なのか。 生きることの目的。 死ぬことの意味とは。 立ち入ってはいけない領域に身を置いた人たちの、 ギリギリの精神状態、 トランス状態とも思えるその姿を目のあたりにし、 スクリーンに張りつめた緊張感は強烈です。 マイケルを演じたのは、メキシコ人のディエゴ・ルナ。 『天国の口終わりの楽園』で、 ガエル・ガルシア・ベルナルと共演した俳優です。 本作で演じたマイケル役は、 まさにマイケルそのもので、 もちろん、 このマイケルは、 あのマイケルとは似ても似つかないのだけれど、 繊細で傷つきやすく、 ありのままを生きるマイケルそのものを演じきっていました。 素晴らしい俳優です。 もう一つ、 映画の中で、マイケルたちのストーリーとは別に、 象徴的に挟み込まれる物語があります。 パラシュート無しで空を飛ぶシスターの話です。 神の導きを信じ、 自ら神と一つになれることを信じた人々。 そして、 観るものの頭を散々混乱させたその物語の先に待っているのは、 あまりにも残酷な結末です。 スクリーンからにじみ出る、 監督ハーモニー・コリンの死生観。 ぶっきらぼうに投げかけられたメッセージ。 朧げな感傷など、微塵に砕かれます。 信じる心の清らかさ、 その美しさの裏側にひそむ闇、不条理、 2つの側面を同時に見せる恐ろしい物語です。 心してどうぞ。 『ミスター・ロンリー』 2007年イギリス・フランス映画 監督 ハーモニー・コリン 出演 ディエゴ・ルナ/サマンサ・モートン |
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