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help リーダーに追加 RSS 『ミスター・ロンリー』

<<   作成日時 : 2008/03/25 00:17   >>

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予告編やチラシのポップな印象を、
いい意味で裏切るクセのある作品でした。
一筋縄ではいかない映画です。

マイケルジャクソンの物まねをして生計を立てるマイケル。
マリリンモンロー扮するマリリン、
さらには、チャップリン、ジェームスディーン、
リンカーン大統領やローマ法王まで。
その場所には、大きな城があり、羊や馬を飼い野菜を育て、
世間から隔絶された不思議な場所。
そこでは、それぞれが自分ではない誰かとして存在しています。
喜びも悲しみも、その誰かとして受け止め、
自分ではない別の人間として生きることが許された楽園です。

なんて滑稽な、そう思うかもしれません。
しかし、彼らを見ているうち、
しだいに理解できるからまた不思議。

それは例えば、
インターネットでブログを書くのと似ています。
そこで表現しているのは、
確かに自分自身なのだけれど、その姿は見せない。
常識や規範などにとらわれることなく、
思う人間を演じられるのも事実。
演じている対象が虚像というなら、
そこにあるのは、全て嘘っぱちかもしれません。
でも、そこでしか表現できない事があり、
そこにある自分のほうが、
人から見えている自分より、より素に近いとも思えます。
表現することこそが生きることとも思える場所なのです。

紙一重のところ、
細いピアノ線一本の上を歩いているような不安定感。
いつまでもそこに居られるわけがないことはわかっている。
でも、一度そこを渡り始めたら、
途中で降りることは出来ない。
それはある意味で、死を選ぶこと。

何が幸福なのか。
生きることの目的。
死ぬことの意味とは。

立ち入ってはいけない領域に身を置いた人たちの、
ギリギリの精神状態、
トランス状態とも思えるその姿を目のあたりにし、
スクリーンに張りつめた緊張感は強烈です。

マイケルを演じたのは、メキシコ人のディエゴ・ルナ。
『天国の口終わりの楽園』で、
ガエル・ガルシア・ベルナルと共演した俳優です。
本作で演じたマイケル役は、
まさにマイケルそのもので、
もちろん、
このマイケルは、
あのマイケルとは似ても似つかないのだけれど、
繊細で傷つきやすく、
ありのままを生きるマイケルそのものを演じきっていました。
素晴らしい俳優です。

もう一つ、
映画の中で、マイケルたちのストーリーとは別に、
象徴的に挟み込まれる物語があります。
パラシュート無しで空を飛ぶシスターの話です。
神の導きを信じ、
自ら神と一つになれることを信じた人々。
そして、
観るものの頭を散々混乱させたその物語の先に待っているのは、
あまりにも残酷な結末です。

スクリーンからにじみ出る、
監督ハーモニー・コリンの死生観。
ぶっきらぼうに投げかけられたメッセージ。
朧げな感傷など、微塵に砕かれます。
信じる心の清らかさ、
その美しさの裏側にひそむ闇、不条理、
2つの側面を同時に見せる恐ろしい物語です。
心してどうぞ。

『ミスター・ロンリー』
2007年イギリス・フランス映画
監督 ハーモニー・コリン
出演 ディエゴ・ルナ/サマンサ・モートン

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